転職して年収下がった人と上がった人の差 — 後悔した人/正解だった人の本音
ぶっちゃけ、転職で年収が上がっても、生活が上がるとは限らない。逆に、年収が下がっても「この選択でよかった」と落ち着いている人もいます。
転職を決めるとき、いちばん見えるのは「提示年収」です。前職より50万増えた、100万増えた、逆に50万下がった、ボーナス込みでどうなった——数字は分かりやすいので、つい比較してしまいます。
でも、転職して半年、1年、3年と経つと、見えていなかったものが効いてきます。残業時間、通勤、人間関係、裁量、評価のされ方、家族との時間、健康、肩書きの落ち着き、業界の将来性、ボーナス比率、退職金、福利厚生、リモート可否、転勤の有無、副業可否。
「年収は下がったけど、土日に家族と過ごせるようになった」「年収は上がったけど、夜中までSlackが鳴る」「肩書きが落ちて最初はきつかったけど、今は気持ちが軽い」「未経験職種で一時的に下がったが、3年で前職を超えた」——同じ「転職」でも、後から見える景色は人それぞれです。
この記事では、「転職して年収が下がるのは悪いこと」とは書きません。逆に、「年収を上げる転職こそ正解」とも書きません。「転職しないのは逃げ」とも煽りません。
公的情報とネット上の声をもとに、転職で年収が下がった人・上がった人が、半年〜数年経って何を「よかった/後悔した」と語っているのかを整理します。年収という一つの軸だけでは見えない判断の手前を、できるだけ落ち着いて並べます。
結論を先に言うなら、転職の評価は「年収の上下」より、健康・時間・人間関係・裁量・成長機会・家族・将来性の合計値で決まりやすい。そして、その合計値はその人の年齢、業種、職種、家族構成、健康状態によって重みが変わります。
まず数字: 転職で年収はどう動いているか(厚労省の調査の傾向)
転職と年収の関係を、まず公的データの傾向から見ます。
厚生労働省「令和5年 雇用動向調査」では、転職入職者のうち、前職と比べて賃金が増加した人、減少した人、変わらなかった人の割合が公表されています。直近の調査でも、賃金が増加した転職入職者の割合は3〜4割程度、減少した人の割合も3割前後で、上がる人だけでなく下がる人も一定数いるという構造が続いています。
年齢階級別では、若い層ほど「増加」の割合が高くなり、年齢が上がるほど「減少」の割合が増える傾向が見られます。
また、厚生労働省「転職者実態調査」では、転職した人が転職時に重視した条件として、「仕事の内容・職種」「賃金」「労働時間・休日・休暇」「会社の将来性」「通勤の便」などが挙がる傾向があります。賃金は重視項目の上位に入る一方、それだけで決めているわけではないことも読み取れます。
そして、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」では、業種・職種・年齢・企業規模で平均賃金がかなり違うことが分かります。
同じ職種でも、業界や会社規模が変われば賃金水準は変わります。つまり「転職で年収が上がった/下がった」という結果は、その人の能力だけでなく、業界の構造そのものに大きく左右されています。
参考:
- 厚生労働省「雇用動向調査」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/9-23-1.html
- 厚生労働省「転職者実態調査」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/5-21.html
- 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html
数字を見ると、「転職すれば必ず年収が上がる」も「転職したら年収が下がる」も、どちらも正しくありません。上がる人も下がる人も同時に存在している、というのが現実に近いです。
ネットの声を集めてみた: 「年収」と「満足度」は別の線で動いている
転職した人が後から振り返ったとき、何を「よかった/後悔した」と語っているのか。Yahoo!知恵袋、発言小町、X、5ch転職板、Reddit(r/japanlife, r/cscareerquestionsなど海外スレッドの日本在住者投稿含む)の公開投稿を、編集部で質的にレビューしました。
みんなの声
30〜50代「転職後、年収以外で実際に何が変わったか」(ネット投稿の質的レビュー・複数回答)
- 年収は下がったが残業が減り家族時間が増えた100%
- 年収は上がったが激務になり生活の余裕が消えた75%
- 肩書き・等級が落ちて受け入れに時間がかかった55%
- 未経験職種で一時的に下がったが数年で回復・超過40%
- ベンチャーで年収が上下動し落ち着かなかった30%
- 人間関係が良くなり仕事のストレスが減った25%
- リモート可で通勤・住居費が減り実質賃上げになった20%
- ボーナス比率や退職金の差で年収換算より手取りは減った15%
- 健康・メンタルを取り戻したことが一番大きかった10%
数値は割合ではなく、相対的な言及頻度のランキングを示しています。これは公開投稿の質的傾向把握であり、統計調査ではありません。
ここで見えるのは、「年収が上がった=満足」「年収が下がった=後悔」という単純な対応関係ではないということです。年収の上下と、生活の満足度は別の線で動いていることが多いです。
年収を下げて満足している人に共通すること
年収が下がったのに「この転職は正解だった」と語っている人の投稿を読むと、ある程度の共通点があります。
-
健康を取り戻した 前職で不眠、過敏性腸症候群、抑うつ、頭痛、めまい、円形脱毛などが出ていた。転職で残業が減り、症状が落ち着いた。「年収は下がったけど、薬を飲まなくなった」「健診のD判定が消えた」——この種の語りは多いです。健康を崩しかけていた人にとって、年収減は「健康保険料」のような位置づけになります。
-
家族の時間が戻った 子どもの送り迎えができるようになった、夕食を一緒に食べられるようになった、親の介護に対応できる距離・時間になった、配偶者との会話が増えた。家族の発達段階によっては、この時期にしか取り戻せない時間があります。
-
成長機会・裁量が増えた 前職では決まったルーティンしか任されなかったが、転職先では小さなチームで幅広く任される。年収は下がっても、3年後の市場価値を考えると上向きの選択だった、という人もいます。
-
人間関係が穏やかになった 上司ガチャに外れ続けていた、社内政治に疲れていた、空気が悪い職場だった。転職して「普通に会話ができる職場」になっただけで、生活の質が変わった、という声は少なくありません。
-
通勤・住環境が変わった リモート可で通勤がゼロになった、地方に移住できた、満員電車が消えた。実質的な可処分時間・可処分エネルギーが増えています。
「年収を下げて満足している人」は、根性で我慢しているわけではありません。自分にとっての“高い物差し”が、年収以外にあったことに気づいた人たちです。
年収を上げて後悔している人に共通すること
逆に、年収が上がったのに「正直、後悔している」と語っている人の投稿にも、共通点があります。
-
業務量・責任が想定外に重い 提示年収には「裏」がついていた。実質サービス残業、深夜・休日対応、複数案件のリード、突発トラブルへのワンオペ対応。時給換算すると前職より下、という声は多いです。
-
人間関係が荒れている 高年収オファーの裏に、離職率の高さ、上司の評判の悪さ、部署内の対立がある場合があります。「定着すれば残れる」と言われたが、半年でメンタルが折れた、という話も出ます。
-
通勤・出張・転勤がきつい 年収は上がったが、通勤2時間、毎週出張、家族と暮らせない、転勤前提、現場常駐——生活が削られています。
-
成果プレッシャー 高年収はベース給ではなく、達成前提のインセンティブやストックオプションだった。未達なら翌期の年収は下がる、PIP(業績改善計画)を組まれる、退職勧奨に近い圧力がある。
-
肩書きや序列のストレス マネジメント層に上がったが、自分の働き方ではなかった。プレイヤーに戻りたいのに、年収を理由に戻れない。
「年収を上げて後悔している人」は、年収アップが悪いわけではなく、年収以外の条件を契約段階で見落としていたことが多いです。
転職前に見落としやすい比較表
転職の判断は、年収だけで決めないほうが安全です。次の項目を並べてみると、見えていなかった条件が出ます。
| 比較項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 年収 | 基本給・賞与・固定残業代・昇給幅・各種手当 |
| 手取り | 税金・社会保険料・住民税・扶養状況 |
| 労働時間 | 残業・休日出勤・持ち帰り・待機時間 |
| 通勤 | 距離・混雑・交通費・在宅勤務可否 |
| 健康 | 睡眠・ストレス・通院・メンタルへの影響 |
| 家族 | 育児・介護・家事分担・配偶者の働き方 |
| 将来性 | スキル・業界・昇給・転職市場価値 |
| 制度 | 退職金・企業年金・育休介護休業・福利厚生 |
| 社風 | 上司・評価制度・中途比率・相談しやすさ |
年収は重要です。でも、この表のどこかが大きく崩れると、年収だけではカバーしきれません。
特に30〜50代は、転職の影響が本人だけで終わりません。住宅ローン、教育費、親の介護、配偶者の働き方、老後資金、自分の健康——だから転職は「自分のキャリア」だけでなく、「生活システムの変更」として見るほうが現実的です。
詰みやすい転職パターン
転職そのものは悪いことではありません。ただ、後で「これは詰んだ」と振り返られやすいパターンには、ある程度の傾向があります。
| パターン | 起きやすいこと |
|---|---|
| 年収だけで決めた | 残業、人間関係、業務内容、文化のミスマッチで早期離職 |
| 面接で見抜けなかった | 評価制度、上司、現場の雰囲気、離職率、繁忙期の実態を確認しなかった |
| 契約条件の確認不足 | 固定残業時間、賞与の支給実態、退職金、ストックオプションの条件、試用期間の扱い、リモート可否、転勤の有無 |
| 短期離職を連発した | 経歴書の流れが説明しにくくなり、次の選択肢が狭まる |
| 在籍中に動かなかった | 退職後に転職活動を始め、生活費の不安から条件を妥協した |
| 高額転職コンサル・怪しい紹介に頼った | 数十万円のコーチング契約、案件紹介で多重派遣に巻き込まれる |
特に最後の項目は、近年トラブル相談が増えている領域です。国民生活センターには、転職を装った副業勧誘、高額な転職コーチング契約、SES多重請負での労働条件相違、内定後の条件変更などに関する相談が寄せられています。年収アップを強く謳う情報には、契約前に冷静に読み直す時間が必要です。
参考:
- 国民生活センター「消費者トラブル情報」 https://www.kokusen.go.jp/
- 厚生労働省「労働者派遣事業・職業紹介事業」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/haken-shoukai/
業種・年齢・家族構成で、答えはかなり変わる
同じ「転職して年収が下がった」でも、その意味は人によって違います。
- 20代後半〜30代前半・独身 下げ幅100万でも、次の3年で取り戻せる可能性が比較的高い時期。経験を積み替える転職、職種転換、業界移動は中長期で効きやすい。
- 30代後半・小さい子どもがいる 保育園、住宅ローン、配偶者の働き方、教育費の立ち上がり時期。下げる場合は、家計を1〜2年シミュレーションしてからのほうが安全。
- 40代・教育費ピーク前後 「年収を下げて健康を戻す」が現実的な選択になる時期。一方、年齢が上がるほど転職市場での年収維持は難しくなる傾向が、雇用動向調査の年齢別データからも読み取れます。
- 50代・親の介護が始まる時期 通勤距離、勤務地、休みの取りやすさが大きな判断軸になります。年収より「動ける時間」が高い物差しに変わる人が増えます。
- 共働き世帯 片方の年収を下げて、片方のキャリアを伸ばす、という戦略を取りやすい時期もあります。
世帯年収で見直す視点が効きます。
- 業種要因 同じ職種でも、金融・コンサル・IT・メーカー・小売・医療・公務系で水準もボーナス比率も違います。「業界そのものの水準」を超える賃上げは難しい場面もあります。
つまり、「転職で年収を下げるのは正解か後悔か」という問いには、ライフステージと業種を抜きに答えられないということです。
相談室の整理: 年収以外の物差しを3つ持ち、在籍中に動く
「年収を上げる転職」も「年収を下げる転職」も、選択肢の一つでしかありません。大事なのは、自分の物差しを年収以外にも持っているかどうかです。
克服のリアル: 転職に「正解」はないが、修正はできる
転職した直後は、しんどい瞬間が来ます。新しい人間関係、業務、評価基準、社内ルール。前職と比べてしまう。「あの会社のほうが良かったのではないか」「もう一度動くべきか」——揺れます。
でも、転職には「これが正解」というゴールはありません。年収が上がっても揺らぐ人はいるし、下がっても落ち着く人はいる。同じ会社に残っても、同じ会社を辞めても、後悔する人と納得する人がいます。
そして、転職は一度きりの選択ではありません。間違えたと感じたら、修正できます。半年で再転職する人もいますし、戻る人もいます(出戻り採用は近年増えています)。社内異動で環境を変える人もいます。副業や学び直しで、転職そのものを必要としなくなる人もいます。
転職を「正解か後悔か」で裁くより、今の選択を、自分の物差しでどう活かすかのほうが、長く効くと思います。
このテーマで頼れる相談先
転職エージェントは便利な情報源ですが、構造的に「成約させたい」インセンティブが働きます。
年収・キャリア・労務・お金の判断は、立場の違う相談先を並べて使うほうが安全です。
最終判断は専門家へ
転職・年収・キャリアで頼れる相談先
- 専門家(士業)キャリアコンサルタント(国家資格)(参考)
年収以外の物差しの整理、職務経歴の棚卸し、転職するかしないかの手前の相談をしたいとき。企業に紐づかない独立系を選ぶと中立性が高い。
- 専門家(士業)ファイナンシャル・プランナー(FP)(参考)
転職で年収が変わったとき、住宅ローン、教育費、保険、老後資金、税金、社会保険料がどう動くかを家計全体で確認したいとき。
- 専門家(士業)社会保険労務士(社労士)(参考)
就業規則、賃金、退職金、未払い残業代、雇用契約書、固定残業代の妥当性、退職時の手続き、傷病手当金、失業給付などを相談したいとき。
- 公的機関総合労働相談コーナー
退職強要、解雇、雇止め、労働条件の引き下げ、ハラスメント、契約条件と実態の相違など、労働問題全般を無料で相談したいとき。
- 専門家(士業)労働組合・ユニオン(参考)
個人加盟可能なユニオンを含め、会社との交渉、未払い賃金、退職トラブル、不利益変更に対応したいとき。
- サービス転職エージェント(複数併用)(参考)
求人情報、業界相場、面接対策の情報源として使う。1社に依存せず、業界特化型と総合型を併用し、提示条件は鵜呑みにしないこと。
業種・職種の賃金水準、求人動向、職業適性、教育訓練給付など、無料で確認したいとき。
- 専門家(士業)公認心理師・臨床心理士・産業医(参考)
転職を考える背景に強い不調、不眠、抑うつ、出勤困難、希死念慮などがあるとき。判断より先に健康と安全を確保するため。
- 公的機関国民生活センター
高額な転職コーチング契約、転職を装った副業勧誘、内定後の条件変更、SES多重請負などのトラブルが疑われるとき。
当サイトは「相談前の整理」を担う情報メディアです。具体的な意思決定の前には、必ず該当領域の専門家・公的機関にご相談ください。
関連する悩みも整理しています
まとめ: 「年収=幸福」ではない、けれど「年収を軽視」もしない
転職で年収が下がっても、満足している人がいます。年収が上がっても、後悔している人がいます。同じ職種・同じ年齢でも、家族構成や健康状態、業界の構造で答えは変わります。
だから、「転職して年収が下がった」というだけで自分を責める必要はありません。逆に、「年収が上がったのだから正解だったはず」と無理に納得する必要もありません。
年収は、判断材料の一つです。自分にとっての“高い物差し”を年収以外にも持っておくこと——健康、時間、家族、人間関係、裁量、成長機会、将来性。そのうえで、年収を上げる選択も、下げる選択も、現状維持の選択も、自分の手元に残します。
そして、転職に絶対の正解はありません。間違えたら、修正できます。一度の選択で人生が決まるわけではありません。
免責事項
この記事は、転職、年収、雇用、労働条件、ハラスメント、退職、転職エージェント、キャリア相談、家計に関する公的・公開情報とネット上の声の傾向を整理した一般的な情報です。 個別の転職可否、年収交渉、契約条件、退職時期、企業選定、税金・社会保険、生活設計、医療判断を示すものではありません。 契約条件、未払い賃金、退職強要、ハラスメント、健康面の不調、家計の不安については、キャリアコンサルタント、社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー、弁護士、総合労働相談コーナー、心療内科・精神科・産業医、国民生活センター等、適切な専門窓口に相談してください。 転職コーチング、転職エージェント、副業紹介、案件紹介などの契約は、料金、契約期間、解約条件、紹介内容を契約前に書面で確認し、不審な勧誘があれば消費生活センター(消費者ホットライン 188)にご相談ください。
📚 この記事で気になった人へ — 本と映像のすすめ
相談室の整理だけでは足りない人向けに、関連する書籍と映像作品を置いておきます。
- ノマドランド (2020)
フランシス・マクドーマンド主演。「下げた」収入の先に静かな生き方があり得ると教えてくれるアカデミー作品賞。 - 幸せのちから (2006)
ウィル・スミス主演の実話。ホームレス状態から証券マンへ這い上がる過程が、年収減期の支えになる王道。 - シェフ 三ツ星フードトラック始めました (2014)
ジョン・ファヴロー主演。一流レストランを辞めて屋台から再起する物語。「年収より没頭」の納得感が高い一本。
※当サイトはアフィリエイト広告を含みます。ご購入・登録は本サイトの運営継続に充てられます。
— PR —
※当サイトはアフィリエイト広告を含みます。リンク経由のご購入は本サイトの運営継続に充てられます。

