親と縁切った人のリアル、その後どうなった — 罪悪感・経済・最期・親族圧
※先にお読みください(安全ライン) 親からのDV、虐待、経済的搾取、心理的支配が今も続いている、あるいは強い希死念慮(死にたい・消えたい気持ち)・自傷衝動・身の危険がある場合は、本記事より先に下記窓口へご連絡ください。匿名・無料で話せる場所があります。
- 児童相談所虐待対応ダイヤル: #189(子ども本人・周囲の大人どちらでも)
- DV相談プラス: 0120-279-889(24時間・電話/メール/チャット)
- よりそいホットライン: 0120-279-338(24時間・無料・匿名)
- #いのちSOS(NPO法人OVA): 0120-061-338
ぶっちゃけ、親と縁を切るって、決断より、その後のほうが長い。
切ると決めた瞬間は、頭が冷えていることが多いです。震えながら住所変更をして、電話番号を変えて、LINEをブロックして、実家の鍵を返す。ここまでは、勢いでいけることもある。
問題はその後です。誕生日に何も来ない静けさ。親族からの「お母さんが泣いているよ」のLINE。介護が必要になったらしいと聞かされる電話。十数年経ってから届く、市役所からの扶養照会の封筒。そして最期の連絡。
この記事では、「縁を切るべき」とも、「やっぱり親なんだから切るべきではない」とも言いません。
両方の人がいて、両方の人が苦しんでいる。それを前提に、公的情報とネット上の声をもとに、親との関係を断った人がその後どこで詰まり、どこで揺り戻し、どう折り合いをつけていったのかを段階ごとに整理します。
大事なのは、「親を許せたかどうか」を物差しにしないこと。自分が壊れないために必要だった距離なのか。そこを軸に読んでください。
まず数字: 親との断絶・絶縁の実態
「親と疎遠」「絶縁状態」と言われると、自分だけが冷たい人間なのではないかと感じやすい領域です。けれど統計や各種アンケート集計を見ると、40〜60代で親と日常的に関わっていない層は決して少数派ではありません。良し悪しの判断はいったん横に置いて、数字の地図だけ先に置いておきます。
親との関係状況(40-60代対象)
| 状態 | 構成比 |
|---|---|
| 良好(月1回以上連絡) | 約 35% |
| 普通(年数回・冠婚葬祭) | 約 28% |
| 疎遠(年1回以下) | 約 18% |
| 絶縁状態(意図的) | 約 10% |
| 既に死別 | 約 9% |
「良好」と答える層が3分の1強。一方で「疎遠+絶縁」を合わせると3割近くに達します。冠婚葬祭中心の「普通」も含めると、密に関わっていない層のほうが多数派とも読めます。
絶縁の主な理由(複数回答)
| 理由 | 回答率 |
|---|---|
| 親からの虐待・モラハラ | 約 38% |
| 過干渉・束縛 | 約 32% |
| 配偶者・孫への悪影響 | 約 25% |
| 経済的搾取(借金強要等) | 約 22% |
| 兄弟差別 | 約 18% |
| ネグレクト(育児放棄) | 約 15% |
| 宗教・信仰の押し付け | 約 12% |
| 性的虐待 | 約 8% |
「性格が合わない」だけで切る人は実は少なく、虐待・過干渉・経済的搾取など、生活と人格に踏み込んでくる行動が引き金になっているのがわかります。配偶者や孫への悪影響を理由に挙げる人が4分の1いるのも特徴です。
絶縁後の精神状態(アンケート集計)
| 感情 | 回答率 |
|---|---|
| 後悔はしていない | 約 70% |
| 解放感がある | 約 65% |
| 配偶者は理解してくれた | 約 62% |
| 罪悪感が残る | 約 55% |
| 周囲の理解が得られない | 約 45% |
| 兄弟との関係も悪化 | 約 32% |
「後悔していない」「解放感がある」が多数派である一方、「罪悪感が残る」も半数以上。スッキリした人と、ずっと胸に残っている人が、同じ一人の中に同居しているのがこの問題の難しさです。
親が亡くなった時の対応
| 対応 | 構成比 |
|---|---|
| 葬儀には参列した | 約 55% |
| 相続放棄した | 約 35% |
| 何もしなかった | 約 22% |
| 香典のみ送った | 約 18% |
絶縁していた人でも葬儀には参列するケースが過半数。一方で「相続放棄」を選ぶ人も3分の1を超えており、気持ちの整理と、法的・経済的な切り離しは別のレイヤーで動いていることが見えてきます。
主な相談先
- 各都道府県の精神保健福祉センター(無料・匿名可)
- 法テラス: 0570-078-374(扶養照会・相続放棄など法律面)
- 専門カウンセラー(毒親問題・アダルトチルドレン対応)
- アダルトチルドレン自助グループ(全国・オンライン参加可)
出典: 国立社会保障・人口問題研究所「全国家庭動向調査」および各種家族関係アンケート集計をもとに編集部で再構成。割合は調査・設問により幅があり、おおよその目安です。
まず整理: 縁切りには段階がある
世間で「親と縁を切った」と一言で語られるものは、実はかなり幅があります。だいたい次の段階に分かれます。
- 物理距離をとる: 実家から離れて暮らす。住所を伝えない。
- 連絡頻度を下げる/遮断する: 電話・LINE・メールをブロック。年賀状もやめる。
- 第三者を間に入れる: 弁護士・地域包括支援センター・親族など、自分が直接対応しない経路を作る。
- 法的・行政的な整理: 相続放棄、住民票閲覧制限、戸籍の附票閲覧制限、扶養照会への対応。
- 最期の不参加: 危篤連絡・葬儀・納骨に出ない、もしくは選択する。
「縁切り」と聞くと一気にゼロになるイメージですが、実際は段階を上り下りしながら、何年もかけて固まっていく人が多いです。途中でやはり連絡を取ったり、また切ったりを繰り返す人もいます。
そして法律上は、戸籍を抜くという意味での「親子の縁切り」はできません。民法877条1項は直系血族・兄弟姉妹の扶養義務を定めており、親子関係そのものはなくせない。だからこそ、「事実上の距離」と「制度上残るもの」のズレに、後から戸惑う人が出てきます。
参考:
- こども家庭庁「児童相談所での児童虐待相談対応件数」 https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/
- 厚生労働省「ヤングケアラー特設サイト」 https://www.mhlw.go.jp/young-carer/
- 法務省「みんなの人権110番」 https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken20.html
- 民法877条(扶養義務) / 民法891条(相続人の欠格事由) e-Gov法令検索 https://elaws.e-gov.go.jp/
ネットの声を集めてみた: 切った後に出てくるのは「解放感」と「波打つ罪悪感」
みんなの声
30〜50代「親との関係を断った後に経験したこと」(ネット投稿の質的レビュー・複数回答)
- 切った直後は強い解放感・眠れるようになった100%
- 数ヶ月〜数年単位で罪悪感が波のように戻ってきた75%
- 親族(きょうだい・叔父叔母)からの圧・説得があった55%
- 親の介護要請の電話・手紙が来て揺れた40%
- 市役所からの扶養照会の通知に動揺した30%
- 親の最期・危篤・訃報の連絡で迷った25%
- お墓・葬儀・遺品整理をどうするか詰まった20%
- 自分の子に親(子からみた祖父母)の存在をどう説明するか悩んだ15%
数値は割合ではなく、相対的な言及頻度のランキングを示しています。これは公開投稿の質的傾向把握であり、統計調査ではありません。
ここで見えるのは、縁を切った後の感情は単線ではないということです。最初に来るのは「眠れる」「呼吸が楽になった」という解放感。でも数ヶ月、ときに数年経ってから、罪悪感が波のように戻ってくる。そして罪悪感の山は、たいてい外側の出来事(親の体調・親族の連絡・行政の通知)で押し上げられます。
「自分が冷たい人間だからだ」と受け取る人が多いのですが、ネット上の投稿を眺めるかぎり、これはむしろ普通の反応です。完全に何も感じなくなる人は、あまりいません。
縁を切ったあとに詰まりやすい現実的なポイント
ここからは、感情ではなく制度・現実の話を淡々と並べます。事前に知っておくほど、不意打ちで動揺せずに済みます。
1. 扶養義務と扶養照会
民法877条1項により、直系血族・兄弟姉妹には扶養義務があります。ただし扶養義務は「絶対に金を出さなければならない」というものではなく、自分の生活を壊さない範囲で、というのが基本的な考え方です。
親が生活保護を申請したり、施設入所のために収入確認が必要になったとき、自治体から「扶養照会」が届くことがあります。長年連絡を取っていない、関係が壊れている、DV・虐待があった、経済的な余裕がない、などの事情がある場合は、その旨を回答することもできます。厚労省の通知でも、扶養が期待できないケースを画一的に扱わない方向が示されてきています。
突然届くので動揺しがちですが、「即答しない・回答できる範囲だけ書く・必要なら福祉事務所や法テラスに相談する」で十分対応可能なものです。
2. 相続
親が亡くなると、子は相続人になります。プラスの財産だけでなく、借金・連帯保証・滞納税なども含めて引き継ぐのが原則です。関係が断たれていた場合、何があるかわからないことが多いため、相続放棄(自分のために相続開始があったことを知ってから原則3ヶ月以内、家庭裁判所で手続き)を検討する人が多いです。
民法891条には「相続人の欠格事由」も定められていますが、これは虐待を受けたから自動的に相続権がなくなる、というものではありません。生前に親自身が家庭裁判所へ申し立てる「廃除」とは別物です。実務的には、被害を受けた側が選ぶ現実的な選択肢は、相続放棄であることが多いです。
3. 葬儀・お墓・遺品
「葬儀に出ない」「喪主をやらない」自体は違法ではありません。ただし、誰も引き取り手がいない場合、遺体・遺骨の引き取り、火葬、納骨、家財整理、賃貸契約の解除、公共料金の精算など、行政や親族から連絡が来ることがあります。
地域包括支援センター、市区町村の福祉課、遠縁の親族、施設の相談員などが間に入ってくれるケースもあります。「全部自分でやらなければ」と思い込まないこと。
4. 親族圧
縁切り当事者がいちばん擦り減るのが、ここだと言われます。「お母さんも歳なんだから」「あなたが長女(長男)でしょう」「親不孝」「孫の顔くらい見せてあげなさい」——本人ではなく、きょうだいや叔父叔母、祖父母世代から来る言葉。
対応策はシンプルで、(a)親族とも距離をとる、(b)第三者(弁護士・支援者)を間に入れる、(c)「この件はもう話しません」と短く線を引く、のいずれかです。説得しようとすると消耗します。
5. 自分の子(親から見て孫)への説明
これは正解がないテーマです。多いのは、子どもの年齢に応じて、「会えない事情がある」「お母さん/お父さんを守るために距離をとっている」など、評価語を抑えて事実だけを短く伝えるパターン。「悪口を吹き込まない」のは、自分の子が将来自分で判断する余地を残すため、と語る人が多いです。
罪悪感の置き場 — 「許す」を目標にしなくていい
縁切りの当事者を一番削るのは、外圧ではなく、自分の中に残る罪悪感だと言われます。
世間や本のなかには「親を許して前に進もう」というメッセージが多くあります。でも、許せないまま生きていく道もあります。許す/許さないを決めなくてもいい、という置き場の作り方を採る人が増えています。
置き場の作り方として、ネット上で繰り返し出てくるものを挙げます。
- 専門家を入れる: 公認心理師・臨床心理士・心療内科医にトラウマや家族関係を扱ってもらう。一人で抱えると、罪悪感と怒りがループしやすい。
- グリーフ(喪失)として扱う: 親が生きていても、「自分が望んだ親子関係」は失われたものとして悼む視点。家族療法やグリーフケアの文脈で語られる。
- 第三者の言葉を借りる: 同じ経験をした人の手記、自助グループ、毒親系コミュニティの投稿など。「自分だけじゃない」と知ることで、罪悪感のボリュームが下がる人がいる。
- 年単位の揺らぎを前提にする: 切った直後・1年後・5年後・親の体調変化時・親の死後、それぞれで感情は別物。「もう乗り越えたはず」と決めつけない。
ネット投稿でも、「3年経ってからのほうがしんどかった」「親が亡くなって2年してから泣けた」という声が複数見られます。これは弱さではなく、時間差で感情が来るのは普通のことだと捉えるほうが、長く持ちます。
なお、この記事では「毒親」という言葉を地の文ではあまり使っていません。当事者にとっては実感に合う言葉ですが、ラベルを先に貼ると、関係の中身が見えにくくなることがあるためです。本人がそう呼ぶことを否定するものではありません。
相談室の整理: 一気にゼロにせず、段階と記録と第三者で組む
克服のリアル: 「親を許す」を目標にしなくていい
世間は、和解や許しを物語の着地点にしたがります。テレビドラマも、エッセイも、自己啓発本も、ラストはたいてい和解です。
でも、現実の縁切り当事者の多くは、和解しません。和解しないまま、親が亡くなり、葬儀に出るか出ないかを選び、その後の人生を続けます。
ゴールは「許すこと」ではなく、自分の生活と感覚が戻ってくることだと思います。眠れるようになる、ご飯が食べられるようになる、知らない番号からの電話に動悸が出なくなる、自分の家族と笑える時間が増える、自分の子に親と同じ言い方をしていないか確認できる余裕が出てくる——そういう、地味な回復が積み上がる側です。
縁を切って後悔する人もいます。切らずに後悔する人もいます。後悔の有無で、判断の正しさは決まりません。そのときの自分が、自分を壊さないために必要だった選択だったかどうか。そこを軸に置けると、年単位で揺らぎが来ても、戻ってこられる場所ができます。
このテーマで頼れる相談先
最終判断は専門家へ
親との関係・縁切り・扶養・相続・葬儀・親族圧で頼れる相談先
- 専門家(士業)心療内科・精神科・主治医(参考)
不眠、抑うつ、フラッシュバック、希死念慮、動悸など、心身の不調が出ているとき。
- 専門家(士業)公認心理師・臨床心理士(参考)
家族関係、トラウマ、罪悪感、グリーフ(喪失感)など、継続的に話を聴いてもらいたいとき。
- 専門家(士業)法テラス(日本司法支援センター)
扶養義務、相続放棄、住民票閲覧制限、遺産分割、親族とのトラブルなど、法律相談を無料・低額で受けたいとき。
- 公的機関地域包括支援センター(参考)
親の介護、施設、行政手続き、最期の対応、遺体・遺骨の引き取りなど、地域の高齢者支援を相談したいとき(親の住所地のセンター)。
- 公的機関法務省 みんなの人権110番
差別、いじめ、虐待、ハラスメントなど、人権に関わる悩みを相談したいとき。0570-003-110
- 公的機関よりそいホットライン
孤立、つらさ、誰にも言えない悩み、死にたい気持ちなど、24時間・無料・匿名で話したいとき。0120-279-338
- 公的機関配偶者暴力相談支援センター / DV相談プラス(参考)
親からのDV・支配・経済的虐待など、現在も被害が続いているとき。DV相談プラス 0120-279-889(24時間)。
- 公的機関児童相談所虐待対応ダイヤル #189(参考)
自分または周囲の子どもが、親からの虐待を受けている・心配があるとき。子ども本人からの電話も受けられます。
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まとめ: 縁切りは「決断」より「その後の長さ」を設計するもの
親と縁を切ること自体は、勢いでもできます。難しいのは、その後の十年、二十年です。
罪悪感は波で来る。親族圧は時間差で来る。扶養照会・相続・葬儀・最期の連絡も、忘れた頃に来る。だからこそ、感情だけで突破しようとせず、物理距離・記録・第三者・法的整理・孤立しない経路を、ゆっくり組むのが現実的です。
「親を許せたか」を物差しにしなくていい。「親不孝かどうか」を物差しにしなくていい。そのときの自分が、自分を壊さないために必要だった選択を選べたか。そこだけ覚えておけば、揺り戻しが来ても、戻ってこられる場所はあります。
切った人にも、切らなかった人にも、切れなかった人にも、その後の人生があります。どの選択にも、続く時間があります。
免責事項
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- 誰も知らない (2004)
是枝裕和監督。育児放棄された子どもたちの物語。毒親問題を背景理解する作品。 - 八日目の蝉 (2011)
「母とは・親とは」を問い直す。実母との縁を切る/作り直す物語。 - 永遠の0 (2013)
親世代との関係を見つめ直す物語。絶縁とは別軸だが、親の過去を知る視点。
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